静岡県湖西市の自動車部品製造業様にて、レムシステム株式会社が社内および工場全体への無線LAN環境構築を実施しました。社員数は約80名、同程度のPCが稼働しており、従来はすべて有線LAN接続で運用されていました。
オフィスや工場では配線が複雑化し、会議や現場作業でケーブルを延長するなど非効率な状態でした。また、一部では個人が持ち込んだ野良アクセスポイントも存在し、セキュリティ面でのリスクが懸念されていました。
本記事では、有線のみの環境から、管理された無線LAN環境へ移行した導入事例として、実際の構成やセキュリティ対策、運用までを解説します。無線LAN導入を検討している企業の方にとって、構築時のポイントやトラブルを防ぐためのヒントが得られる内容です。
無線LAN導入前の課題
導入前の調査では、LAN配線の乱雑化以外にも、社内ネットワークのIPアドレス枯渇という深刻な問題が見つかりました。新たなアクセスポイントを追加する余裕がなく、このままでは無線LANの構築ができない状況でした。
また、部署やエリアごとにネットワーク管理が分断されており、どの機器がどこに接続されているかを把握できていない点も課題でした。これにより、通信トラブル発生時の切り分けやセキュリティ対応に時間がかかっていました。
| 主な問題点 | 改善内容 |
|---|---|
| LANケーブルが乱雑に配線されている | 有線ネットワークの再設計と配線整理を実施 |
| ローカルIPアドレスが枯渇している | ロケーションごとにサブネットを分割し、L3スイッチでルーティング構成を最適化 |
| ネットワーク機器の管理なし | YAMAHAの「L2MS」プロトコルを活用し、ネットワーク機器を統合管理化 |
| 社内に非管理の野良アクセスポイントが存在 | MAC認証・可視化ツールの導入で接続機器を制御 |
これらの課題を解決するために、レムシステムではL3スイッチ+PoEスイッチ+YAMAHA製無線アクセスポイントを組み合わせたネットワーク再構築を提案。
YAMAHA製品が対応するL2MS(Link Layer Management System)プロトコルを活用することで、スイッチやアクセスポイントを一元的に管理でき、機器構成や接続状況を可視化できる仕組みを実現しました。これにより、障害時の原因特定や運用効率も大幅に向上しています。
無線LANのセキュリティ設計
無線LAN導入にあたって、お客様が最も懸念されていたのは社内ネットワークへの不正接続リスクでした。これまでは有線LANのみだったため、接続端末を限定的に管理できていましたが、無線化によってアクセス経路が増えることになります。そのため、導入段階からセキュリティを考慮した設計が不可欠でした。
レムシステムでは、まず企業規模・運用体制・担当者のスキルを踏まえた上で、最適な認証方式を検討しました。理想的には、証明書を用いた802.1X(EAP-TLS認証)が望ましいものの、初期運用の負担を考慮し、段階的な導入を提案。
第一ステップとしてMACアドレス認証を採用し、登録済み端末のみがネットワークへ接続できる仕組みを導入しました。これにより、導入直後から無許可端末の排除と端末管理の明確化が可能となりました。
| 認証方式 | 概要 | 導入時のポイント |
|---|---|---|
| MACアドレス認証 | 端末の物理アドレスを登録してアクセスを制御 | 初期導入が容易で、既存機器との互換性が高い |
| 802.1X(EAP-TLS認証) | 証明書による強固な認証方式。内部不正にも強い | 運用に証明書管理が必要。段階的導入が現実的 |
また、今回の導入ではYAMAHA製の無線アクセスポイント(WLXシリーズ)を採用。これにより、L2MSによるネットワーク全体の統合管理が可能となり、どの端末がどのアクセスポイントに接続しているかを即座に確認できます。セキュリティ設定の変更やファームウェアの更新も一括で行えるため、運用の手間を大幅に軽減できました。
最終的に、社内LANと来客用Wi-Fiを明確に分離し、社内端末のみが内部ネットワークにアクセスできるよう構成。来客用ネットワークはインターネット専用の独立セグメントとし、情報漏えいや不正アクセスのリスクを最小限に抑えました。
ネットワーク管理と可視化の実現
無線LANの導入と同時に、お客様からは「社内ネットワークの可視化と管理を強化したい」という要望をいただきました。これまで、どの端末がどのスイッチやハブを経由して接続されているか把握できず、トラブル時の原因特定に時間がかかっていました。
この課題を解決するため、レムシステムではYAMAHAのL2MS(Link Layer Management System)を活用した統合管理環境を構築しました。L2MSは、スイッチやアクセスポイントなどのネットワーク機器を自動検出し、1台のルーターや管理PCから状態を一元的に確認できるYAMAHA独自の仕組みです。
| 導入前の課題 | 導入後の改善効果 |
|---|---|
| どの端末がどのアクセスポイントに接続しているか把握できない | L2MSによる自動検出で、接続端末を一覧管理可能に |
| ネットワーク障害時に切り分けが困難 | スイッチやAPの状態をリアルタイムに監視・通知 |
| 設定変更やファーム更新に手間がかかる | 管理機器から一括で設定配信・更新を実施可能 |
| 野良アクセスポイントが検出できない | 接続履歴を確認し、不明な機器を迅速にブロック |
L2MSを利用することで、ネットワーク全体の構成を「見える化」できるようになり、トラブル発生時にも迅速に対応できる体制が整いました。特に、部門ごとのトラフィック把握やアクセスポイントの稼働状況を可視化できる点は、管理者の負担軽減と運用品質の向上につながっています。
また、管理機器にはYAMAHAのルーターとスイッチを組み合わせ、統一されたインターフェースで運用できる構成としました。これにより、トラブル時の切り分けもシンプルになり、今後の拡張やリモート保守にも柔軟に対応可能なネットワーク基盤が完成しました。
導入工程と作業の流れ
無線LAN導入プロジェクトは、現地調査からネットワーク設計、機器の設定・設置までを一貫してレムシステムが担当しました。
オフィスと工場の両方をカバーするため、電波干渉や配線経路、アクセスポイントの設置位置などを事前にシミュレーションし、安定した通信品質とメンテナンス性を両立する構成を策定しました。
| 工程 | 作業内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 現地調査・計画 | 建屋構造と配線経路を調査し、アクセスポイントの最適配置を決定 | 電波の届き方や干渉を考慮し、将来拡張も見据えた設計 |
| ② 機器構成・設計 | L3スイッチ・PoEスイッチ・無線APを組み合わせたネットワークを設計 | YAMAHA製機器による統一で設定・管理を簡素化 |
| ③ 機器設定・導入 | L2MSを活用し、スイッチ・APを一括設定。MAC認証の登録作業を実施 | 初期設定後の動作確認とセキュリティテストを実施 |
| ④ 設置工事 | 高所・天井など難所へのAP設置を協力会社と連携して実施 | 安全性・見た目・メンテナンス性を考慮した施工 |
| ⑤ 動作確認・引き渡し | 各エリアでの電波強度・接続安定性を測定し最終調整 | トラブル時の連絡ルートと運用マニュアルを納品 |
工場を含む広い敷地全体をカバーするため、最終的に15台のアクセスポイントを設置。電波の届きにくいエリアにも中継ポイントを配置し、どの場所でも安定して通信できる環境を整えました。特に、生産ライン付近のノイズ対策や高所設置の安全施工など、製造業ならではの現場要件に合わせた工夫も行っています。
構築後は各アクセスポイントの稼働状態をモニタリングし、通信品質の測定やチャンネル調整を実施。L2MSによる管理画面上で各機器を統合的に確認できるように設定しました。これにより、今後の運用でもトラブル発生時の原因特定や保守対応が容易になっています。
導入効果と運用サポート
今回の無線LAN導入では、単に「Wi-Fiを使えるようにした」だけでなく、ネットワーク全体の安定性と管理性が大きく向上しました。導入後の調査では、オフィス・工場いずれのエリアでも通信品質が安定し、業務効率の向上につながっています。
| 改善項目 | 導入効果 |
|---|---|
| ネットワークの安定性 | 通信切断や速度低下が大幅に減少し、業務中のトラブルが解消 |
| 可視化と管理性 | L2MSにより接続端末・アクセスポイントの状態をリアルタイムに監視可能 |
| セキュリティ | MAC認証による端末制御で、無許可デバイスの接続を防止 |
| 業務効率 | 有線LAN接続の手間が不要になり、会議・生産現場での柔軟な作業が可能に |
| 保守性 | 遠隔監視・リモート対応により、トラブル時も迅速な対応が可能 |
導入後は、ネットワークの監視やファームウェア更新などの定期保守をレムシステムがリモートで支援しています。トラブル時には遠隔から設定確認やログ解析を行い、必要に応じて現地対応も可能な体制を整えています。
また、保守契約を通じてお客様の運用状況を定期的にモニタリングしており、将来的なネットワーク拡張やセキュリティ強化に向けた提案も行っています。これにより、導入後も長期的に安定した運用を継続することができます。
今回のプロジェクトでは、YAMAHAの無線アクセスポイント・スイッチを中心とした統一構成により、初期構築から保守運用までをスムーズに実施できました。特に、L2MSによる集中管理は、お客様にも「運用が見える」「安心できる」と高く評価されています。
静岡県・東海エリアを中心に、オンライン対応で全国からのご相談も承っています。現在の構成が分かる資料(ネットワーク図・利用中機器など)があれば、より具体的なご提案が可能です。