こんにちは、レムシステム株式会社のエンジニア、小村(@system_kom)です。YAMAHAのRTX1220は、中小企業のVPNや拠点間通信で人気の高いルーターです。安定した動作と管理のしやすさから、当社でも導入実績が多くあります。本記事では、導入時に必ず行いたいファームウェアアップデートの手順を、バックアップから復旧まで分かりやすく紹介します。
出荷時のRTX1220は古いファームウェアが搭載されていることがあり、更新を怠るとセキュリティリスクが高まります。ここでは、コンソール接続による安全なHTTPアップデートと、バックアップ・復旧手順までを解説します。RTX830やRTX1300など他のRTXシリーズでも共通の手順です。
RTX1220への接続と管理者モード
RTX1220をPCと接続し、TeraTermなどのターミナルソフトでアクセスします。初めての操作では、再起動メッセージを確実に確認できるシリアル接続をおすすめします。TelnetやSSHでも可能ですが、更新時にセッションが切断されることがあります。
> administrator
上記のコマンドを実行し、パスワードを入力後にプロンプトが#へ変われば、管理者モードへの移行が完了です。RTXシリーズでは、一般ユーザーと管理者ユーザーで実行できるコマンドが明確に分かれており、特に設定変更やファームウェア更新は管理者権限でなければ実行できません。
以下の表は、一般ユーザーと管理者ユーザーでの主な違いをまとめたものです。誤った操作や設定変更を防ぐためにも、権限の扱いには注意が必要です。
| 権限レベル | 実行可能な操作 | 注意点・制限 | 
|---|---|---|
| 一般ユーザー(> プロンプト) | 情報の参照(ログ確認・ステータス表示など) | 設定変更・ファーム更新などの管理操作は不可。誤って設定を壊すリスクは少ないが、閲覧専用。 | 
| 管理者ユーザー(# プロンプト) | 設定変更、保存、再起動、ファーム更新など全操作が可能 | 誤操作による通信断・設定破損の恐れがあるため、慎重な操作が必要。 | 
作業時は、設定を確認する段階では一般ユーザー権限、変更や更新を行う際のみ管理者権限に切り替える運用がおすすめです。
稼働中ファームウェアの確認
現在動作中のファームウェアのリビジョンを確認します。YAMAHAルーターは定期的にセキュリティ修正や機能追加が行われており、古いリビジョンのまま使用を続けると脆弱性リスクが高まります。基本的には最新リビジョンへの更新を推奨します。
# show exec list
----- --------------------------------
* 0 Rev.15.xx.xx
 「*」印がついているものが現在の稼働ファームウェアです。
 最新のリビジョンはYAMAHA公式のリリースノートページで確認できます。バージョン間で修正内容(セキュリティ対応・不具合修正・新機能追加)が公開されていますので、更新の判断時には必ず参照してください。
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									YAMAHA RTX1220 ファームウェア リリースノート(公式サイト)www.rtpro.yamaha.co.jp 
ファームウェアのバックアップ
ファームウェアを更新する前に、現在動作しているイメージをバックアップします。これにより、更新後に不具合が発生しても、すぐに元の状態へ戻すことができます。RTXシリーズでは、ファームウェア領域(exec)を複数保持できるため、安全なロールバック環境を確保してから作業を行うのが基本です。
# copy exec 0 1
# show exec list
----- --------------------------------
* 0 Rev.15.xx.xx
1 Rev.15.xx.xx
バックアップが完了すると、No.1に同じリビジョンがコピーされます。これで、いつでも旧ファームウェアで再起動できる状態が整いました。次の章でHTTP経由の安全なアップデートを実施します。
設定ファイルのバックアップ
ファームウェアのバックアップに加えて、現在の設定ファイル(config)も保存しておきましょう。ルーターの動作設定はこのconfigにすべて記録されています。更新作業中にエラーが発生した場合や設定内容が消失した場合でも、事前にconfigをコピーしておけば、すぐに元の構成へ復旧できます。
# show config list
# copy config 0 4
# show config list
----- ---------- -------- ----- ------ -------------------
* 0 2025/10/20 14:37:11 3503 211/211
4 2025/10/31 16:23:55 3503 210/210
上記のように、No.4へコピーが作成されたことを確認できればconfigの退避は完了です。設定ファイルには、ネットワーク構成・VPN設定・ユーザー認証・静的ルートなど、すべての情報が含まれています。これを失うと復旧までに大きな時間がかかるため、更新前に必ず保存を行ってください。
バックアップ後は、設定内容の整合性を簡単に確認しておくと安心です。以下のコマンドでconfigの差分を比較し、更新後に意図しない変更がないかをチェックできます。
# show config diff 0 4
この比較結果で変更がなければ、正しくバックアップが取れています。設定内容に差異がある場合は、バックアップ番号を変更して再保存しましょう。誤って古い設定を上書きすると復旧できなくなる可能性があるため、作業時には日付とNo.を記録しておくことをおすすめします。
HTTPで最新ファームへ更新
YAMAHAの公式サーバーから最新ファームウェアを取得し、ルーターに適用します。RTX1220の場合、HTTP経由の更新コマンドで安全にアップデートを行えますが、実行中に電源を切ったりLANケーブルを抜いたりすると機器が起動不能になる可能性があります。作業中は必ず電源・回線の安定した環境で行ってください。
また、ファームウェア更新時には一時的にルーターが再起動します。これにより通信が数分間停止するため、営業時間外や通信が少ない時間帯に実施するのが安全です。必要に応じて、VPN接続や社内サーバーへのアクセスが一時的に切断される旨を利用者に周知しておくとトラブルを防げます。
# http revision-up go
上記のコマンドを実行すると、ルーターが自動でYAMAHAの公式サーバーへアクセスし、最新版のファームウェアを確認します。更新がある場合は、現在のリビジョンと新しいリビジョンの比較が表示され、続行するか確認を求められます。
更新しますか? (Y/N) → Y
「Y」を入力すると、ダウンロードと書き換え処理が自動的に進行します。ファームウェアの容量は約7~8MB前後のため、通信速度によっては1~2分程度かかる場合があります。ダウンロードが完了すると、ルーターは自動で再起動します。
再起動後は、ターミナルソフトで再接続し、再度リビジョン番号を確認して更新が反映されていることを確かめます。
# show exec list
----- --------------------------------
* 0 Rev.15.yy.yy(更新後)
1 Rev.15.xx.xx(旧版バックアップ)
 リビジョン番号が新しいものに切り替わっていれば、更新は正常に完了しています。
 万が一、更新中にエラーが発生した場合でも、前章でバックアップしたファームウェア(No.1)を利用して復旧できます。万全を期すため、更新後にネットワーク動作やVPN接続の確認もあわせて行いましょう。
更新後の確認とロールバック
ファームウェアの更新が完了したら、ルーターの動作確認を行いましょう。RTX1220の再起動後は、設定が正しく読み込まれているか、ネットワーク通信が正常に行えるかを確認します。特にVPN環境を利用している場合、接続設定の再適用や暗号方式の互換性チェックが重要です。以下のような項目を順番に確認しておくと、更新後のトラブルを未然に防げます。
| 確認項目 | 内容 | 
|---|---|
| LAN通信 | 社内PCからルーターのゲートウェイへpingを実施。応答があれば基本動作は問題なし。 | 
| インターネット接続 | ブラウザで外部サイト(例:yahoo.co.jp)にアクセス可能か確認。 | 
| VPN接続 | 拠点間VPNやリモートVPNが正常に再接続できるか確認。 | 
| ログ確認 | 「show status」「show log brief」コマンドでエラーがないかチェック。 | 
| 再起動時の動作 | configが正しく読み込まれているか再起動後にも再確認。 | 
もしこれらの確認中に通信不具合やVPN接続エラーが発生した場合は、バックアップしておいた旧ファームウェア(exec)と設定(config)へ戻すことで迅速に復旧できます。RTX1220では「set-default」コマンドを用いて簡単にロールバックが可能です。
# show exec list
# set-default-exec 1
# set-default-config 4
# restart
上記のコマンドを実行すると、RTX1220はバックアップしておいた旧ファームウェア(No.1)と旧設定ファイル(No.4)を読み込んで再起動します。再起動後は、次のように表示されていることを確認してください。
----- --------------------------------
* 0 Rev.15.yy.yy(更新後)
1 Rev.15.xx.xx(バックアップ)
No. Config
----- --------------------------------
* 4 2025/10/31 16:23:55(バックアップ設定)
リストの「*」印が付いているファームウェアとconfigが、現在起動中のものです。意図した番号になっているかを確認しましょう。これで旧バージョンへのロールバックが完了です。
復旧後は、ネットワーク動作を再度確認し、問題が解消していることを確かめます。もし更新後の新しいリビジョンに特定の不具合がある場合は、一定期間この旧ファームウェアで運用を継続し、次回の安定版リリースを待ってから再度更新することをおすすめします。
まとめ
ここまで、RTX1220のファームウェア更新からバックアップ、復旧までの手順を解説しました。どの工程も難しい操作ではありませんが、手順を誤ると通信断や設定消失につながることがあります。以下に、更新作業時の流れと重要ポイントを整理しました。
| 手順 | ポイント | 備考 | 
|---|---|---|
| 1 | exec / config のバックアップを取得してから作業を開始する | 更新失敗時にも即時復旧が可能 | 
| 2 | HTTP更新コマンドで最新ファームウェアを適用し、再起動後に確認 | インターネット接続環境が必要 | 
| 3 | 通信テスト・VPN確認を実施し、問題があればset-default-execで旧版に戻す | 業務影響を最小限に抑えられる | 
| 4 | 安定運用後も定期的なバックアップと更新履歴の記録を行う | 長期運用でも安全に維持できる | 
RTX1220は中小企業や複数拠点をもつ法人様に最適なVPNルーターであり、安定性と運用性の高さが大きな魅力です。ただし、導入後のファームウェア更新やVPN設定の最適化を怠ると、セキュリティリスクや通信トラブルの原因になります。
レムシステムでは、RTXシリーズ(RTX830 / RTX1220)を中心に、VPN・リモートアクセス・セキュリティ導入までを一貫してサポートしています。メーカーサポートだけでは対応しにくい複数拠点接続・クラウド連携・UTM連携構成にも柔軟に対応。現場経験豊富なエンジニアが、実際の運用に合わせた最適な設定をご提案します。
「拠点間VPNを安全に導入したい」「既存ルーターの設定を見直したい」「社外アクセスの仕組みを整えたい」などのお悩みは、ぜひ当社までご相談ください。現地調査・設定・運用支援を自社エンジニアが一貫対応いたします。
 
               		           		  